①現地の味シリーズ <嶽きみ編>
全国の「てしごと」を集める仕事をしていると、今まで知らなかった「現地の味」に出会うことがあります。それはグルメサイトなどに載るような有名店の味ではなくて、むしろ今まで知ることのなかった素朴で隠れた地元の名産品であることが多いのです。特に忘れられない味をシリーズ化して皆様にご紹介します。
その日は秋田市内の郷土館などをじっくり見てから上小阿仁を経由して、大館で曲げわっぱの商談をしたあと弘前に向かわなければならない行程でした。朝食を抜いて秋田市内を出発して五城目の道の駅で休憩をしていると「嶽のきみ」という手書きのカードがクーラーボックスに貼られており、中を開けるとまだ熱いトウモロコシが入っていたので1本買いました。お腹が空いていたので出発する前の車内で早速頂くと「ブッシャーッ」と弾けると同時にフロントガラスに水分が飛び散りました。その後にくる衝撃の甘さと瑞々しさに「ふなっしーかよっ」と呟きつつ車を走らせました。上小阿仁の道の駅で改めて「嶽きみ」について調べると、岩木山麓の「嶽地区」で栽培されたトウモロコシ(きみ)だけが、「嶽きみ」というブランド名を名乗れることが分かりました。「きみ」は十和田の「きみから」という工芸品からトウモロコシであることは分かりましたが、「嶽」とは岩木山麓の地区名だったのです。岩木山麓はリンゴでも有名ですが、その標高の高さが生む昼夜の激しい寒暖差が、トウモロコシの糖度を極限まで引き上げるため、他の地域のものとは比較にならない甘さになるらしいのです。
そのあと弘前市で「こぎん刺し」の商談をして、岩木山麓を鯵ヶ沢方面に向かっていると、多くの農園が「嶽きみ」の幟を上げていて、「今夜は必ず嶽きみを食べる」と誓ったのでした。
青森市内に戻ってきてホテルの近くの居酒屋でメニューの中に「嶽きみ」を見つけて早速注文しました。もちろん「湾内産」の魚なども絶品ですが、ここで食べる「嶽きみ」は今まで食べたトウモロコシとは全く違う次元の甘さの中に、奥行きのある旨味が凝縮されていて絶品でした。もちろん追加で注文しました。しかし居酒屋は食べやすく芯を外して削ぎ切りにしているので、「ブッシャーッ」とはなりません。やはりトウモロコシは丸ごと食べるに限ります。
何故「嶽きみ」が五城目の道の駅で売られていたのか今では分かりませんが、ひょっとすると茹で方などにも秘密があったのかも知れません。「津軽」と聞くと「こぎん刺し」や「曲げわっぱ」などの美しい工芸品を思うと同時に、「嶽きみ」の甘さに今でも目を瞑るのです。
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