canosa story Vol. 1 白い村の林檎と焼き物
canosaは沖縄の工芸品はもちろん、日本全国の工芸品や手しごと作品を取り扱っています。その日本各地にある手しごとのこと、canosaの好きなもの、作家さんのこだわり、工芸品や雑貨の魅力など、canosaの視点で感じた事や、作品との出会いを "canosa story"と題してこれからご紹介していきたいと思います。
第一回目は、長野での素敵な出会いについて。canosaで取り扱うきっかけにになった焼き物のお話です。(canosaオーナーの体験談です)
【canosa story Vol. 1】
信州のとある村に素敵な宿があることを知った。前々から訪れてみたいと思っていた小さな夢がかなった。
学生時代に偶然迷い込んだその村には積年の思い入れがあり、ユーミンの「雪だより」を聞くと真っ先にその白い村を思い出した。思い立って10年ほど前、志賀高原に一人でスノボーに行った帰りに再び立ち寄ってみた。季節は春だったが、遠くに白い後立山連峰を望める美しい村の近くには、自動車道が開通していて思いのほか簡単に行けてしまった。だが、海を隔てた沖縄に住んでいると、そう簡単には行けず、結局次に訪れるまでにはさらに時間を要した。
その村の幹線道路からかなり高度を上げた集落にその宿はあった。1日1組の宿泊客だけが、質の高いフレンチ料理を朝夕に頂くことが出来るオーベルジュ。調度品や部屋はもちろん料理もうつわも素敵だった。うつわのいくつかは、地元の作家さんによるのものだという。料理にマッチしていてとても印象に残った。
その宿は広大なリンゴ畑も管理していて、夏の終わりに徐々に実り出したシナノスイートの収穫体験もさせていただいた。収穫しながらその場でほおばると、その瑞々しさに驚いた。朝食ではリンゴを絞っただけのまさに100%ジュースも供されたが、これがまた心底うまかった。
チェックアウトした後、その宿で使われていた印象的なうつわの作家さんを訪ねてみた。canosaは現地での発見をとても大切にしている。「沖縄から来た」というとアポなしでもとても歓迎していただいた。宿と同じ村にあるその工房では、女性がひとり緑に囲まれた美しい環境で静かに作陶していた。その村の晩夏のさわやかな風が吹き込んでくるギャラリーには、優しげでユニークな作品が所狭しと並んでいて、その中からいくつか段ボールに詰めて貰って沖縄まで持ち帰った。三度目の訪問で、縁を感じていたこの村に度々戻れる理由ができた。
持ち帰ったうつわたちは、販売と共に徐々に手から離れていってしまう寂しさもある。と同時に「また仕入れに行こう」と心が軽くもなるのだった。