canosa story Vol. 15 沖縄伝統工芸の総本山「おきなわ工芸の杜」

「おきなわ工芸の杜」は沖縄本島の豊見城市にあります。豊見城(とみぐすく)という地名は、三山時代(1315世紀)に、後の南山王となる汪応祖(おうおうそ)が漫湖を眺望する高台に城(グスク)を築き、それを「とよみ城」と呼んだことに由来するといわれています。「とよみ」とは、”鳴り響く”、”名高い”などの意味があり、それが時代とともに「とよみぐすく」「てぃみぐすく」「とみぐすく」と変遷したと思われます。しかし今でも「とよみ」の名は「とよみ大橋」「とよみ小学校」「FMとよみ」「~とよみ店」など、呼び辛い<トミグスク>の代わりにこの土地を表す言葉として使われています。もっとも地元では<とみしろ>という方が多いかも知れません。

豊見城市は、戦前はサトウキビ、戦後は野菜産地として有名な純農村でしたが、本土復帰を境に、急速に都市化が進み、人口も増加の一途をたどりました。1976(昭和51)12月末には全国一人口の多い村(当時は豊見城村)となり、以後、全国1位、2位を競い合う”大きな村”に発展しました。1978(昭和53)に策定された「第1次総合計画」の基本構想で”市へ移行する”ことを目標に掲げ、市制施行へ向けたさまざまな取り組みを進めてきました。そして2002(平成14)41日、念願の市制施行を実現しました。ちなみに地方自治法施行(昭和22)後、村から町を飛びこえ単独で市になったのは、全国初です。そして現在では人口も65千余人となり、年少人口割合が市区別で日本一の活気ある街に見事に発展しました。


「おきなわ工芸の杜」はそんな発展際立つ豊見城市の緑深い豊見城城址公園跡地に県の施設として202241日オープンしました。『おきなわ工芸の杜』は沖縄の工芸産業の振興のため、人と技術・情報の交流拠点となる施設です。当施設には工芸品への理解を深め、未来へ繋げていくための3つの役割があります。

ー 工芸品に関する情報発信 ー
本県の伝統的工芸品を集めた常設の展示室があり、歴史や作り方について学ぶことができます。一般来訪者だけでなく、工芸従事者向けの専門的な技術研修や講習会も予定しています。当施設を通して多くの人へ情報発信をおこないます。

ー 工芸品を製造する作り手の支援 ー
当施設には工芸の製作や研修に必要な機器等が設置された『共同工房』や、沖縄の工芸素材や図書資料を元にしたデザイン試作等をおこなう開発スペースがあります。そのほか創業間もない作り手のための『貸し工房』など、これからを担う作り手の育成や支援をおこないます。

ー 作り手と使う人の交流の場 ー
施設内には貸し工房や共同工房などがあり、多くの作り手が製作活動をしています。一般来訪者は製作の様子を見学したり、実際に体験工房で製作をすることができます。見学や体験などを通して作り手と使う人との交流の場をつくります。体験工房は藍染め、やちむん、琉球ガラス、機織り、木工など常時受け付けており、観光の合間に手軽に自分の作品を作ることが出来ます。


伝統工芸品の指定数でいうと、沖縄は日本全国で3(新潟県と同位)16品目となっています。この数字は行政が定めたものですから実際にはもっと多くの工芸品が存在します。壺屋焼、宮古上布、琉球漆器、久米島紬、琉球絣、知花花織、八重山上布、八重山ミンサー、首里織、読谷山花織、琉球紅型、喜如嘉の芭蕉布、与那国織、読谷山ミンサー、三線、南風原花織の実物を「おきなわ工芸の杜」の展示室で見ることが出来ます。また館内のショップで魅力的な工芸品を買い求めることも出来ます。

館内には様々な作家さんのために貸し工房があり、実際に作品を製作している風景を見ることが出来ます。運が良ければ直接話を聞くことが出来るかも知れません。さらに火曜日から土曜までは研修生が紅型、染め織、木工、漆芸、金細工、皮革縫製などを学んでおり、これから独り立ちする作り手の育成を行っています。

工芸や手仕事の大きなイベントやワークショップも頻繁に行われており、駐車場にさえ入れないほど賑わうことも珍しくありません。


このように「おきなわ工芸の杜」は沖縄における工芸の拠点になっているわけです。工芸に興味のあるなしに関わらず、一度は足を運んでみるべき施設です。お隣にはこれまた空手の総本山「沖縄空手会館」があり、こちらも沖縄を知る上で欠かせない施設になっています。また徒歩圏内に「旧海軍司令部壕 (海軍壕公園」があり、光り輝く沖縄だけでなく、陰の部分を知ることが出来ます。

観光客のみならず地元の方も「おきなわ工芸の杜」で工芸品の製作体験や、他にはないショッピングを楽しまれてはいかがでしょうか。


(おきなわ工芸の杜)
https://okinawa-kougeinomori.jp

(canosa)
https://canosa.net