canosa story Vol. 32 カップと珈琲の関係 〜 飲み口で変わる、香りと余韻
いつもの朝、いつもの豆、いつもの抽出方法。それでも、使うカップが変わると、味の印象が違って感じられることがあります。これは錯覚ではありません。味わいの違いを生み出している要素のひとつが、カップの「飲み口」なのです。
コーヒーが口に入るとき、最初に触れるのが飲み口。その形状や厚みは、液体の流れ方や舌への当たり方に影響し、香りや余韻の感じ方を左右します。
薄い飲み口では、液体が軽く舌へ広がり、香りが立ちやすくなります。厚みのある飲み口では、液体がゆっくりと口中に入り、甘みやコクが穏やかに広がります。
飲み口は、香り、酸味、甘み、余韻といった要素の出方や順序を調整する、繊細な接点と言えるでしょう。
①飲み口の厚さが風味を変える理由
薄い飲み口は、液体が細く速く舌に広がり、空気に触れる面積が増えます。その結果、香りの立ち上がりが早く、酸味やフレーバーが明瞭に感じられます。一方、厚い飲み口では、液体が太くゆっくり流れ、舌の奥で滞留しやすくなります。コクや苦味が際立ち、余韻が長く残る傾向があります。
ここで注目したいのが、香りと舌に届く温度の関係です。薄い飲み口は温度の分散が早く、軽やかな酸味が引き立ちます。厚い飲み口は温度を保ちやすく、ボディ感を損なわずに伝えます。同じ豆でも、印象が大きく変わる理由です。
②焙煎度と飲み口の相性
浅煎り(エチオピア、ケニア、コロンビアなど)には、薄い飲み口が向いています。香りや柑橘系、花のような酸味を遮らず、豆本来の透明感を保ちやすくなります。
深煎り(マンデリン、ベトナムなど)には、厚い飲み口が適しています。油脂分やカラメル系の香りを逃がさず、苦味と甘みの奥行きを感じやすくなります。
③ 飲み口による味わいの違い
飲み始めの印象では、薄い飲み口は香りが先行し、厚い飲み口はコクが前に出ます。口中での滞留時間にも差があり、薄い飲み口は切れが良く、厚い飲み口は余韻が長く残ります。焙煎度や産地の特性と組み合わさることで、カップ選びに理由が生まれます。
- カップが変える、珈琲の味わい -
canosaの器は、飲み口の厚みだけでなく、土の質感や釉薬の表情、持ったときの重さなど、さまざまな要素が味わいに影響します。カップは単なる容器ではなく、コーヒーの印象を調整する道具でもあります。
ご自宅のカップの縁を指でなぞり、その厚みを確かめてみてください。その違いが、香りの立ち方や余韻の残り方に関わっていることに気づくはずです。
風味と飲み口、抽出温度の目安
華やかで透明感のある味わいの浅煎りには、薄い飲み口とやや高めの抽出温度(90〜95℃)。
苦味とコクを重視する深煎りには、厚い飲み口とやや低めの抽出温度(85〜90℃)。
甘みとバランスを重視する中煎りには、中間的な飲み口と標準的な抽出温度(約90℃)が向いています。
ミルクを加えるラテやカプチーノの場合は、飲み口の印象も変わります。一般的には、厚みのある、もしくは中間程度の飲み口が好まれます。温度を保ちやすく、ミルクの甘みやエスプレッソのコクを安定して感じやすくなるためです。
次はどんな一杯を淹れようか。そう考える時間も、コーヒーの楽しみのひとつです。沖縄はコーヒー豆専門店が多く、個性あるロースターが集まる激戦区でもあります。canosaには、YAMADA COFFEE OKINAWA の豆を使用するカフェを併設しており、実際に味わいを確かめながらカップを選ぶことも可能です(有料)。
canosaが集めた器は、日々のコーヒーの印象に静かな違いをもたらします。
飲み口の厚みが、香りや余韻の感じ方にどのように影響するのか、ぜひ確かめてみてください。
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