canosa story Vol. 4 鞄のまち 豊岡
canosa story 第四回目
豊岡と聞いて地図でその場所をピンポイントで当てられる人は近隣の住民、鉄道マニア、地図マニアくらいではないでしょうか。むしろ市内にある「城崎温泉」の方が有名だと思います。
しかし豊岡と聞いてcanosaが真っ先に思い浮かべるのは「鞄」。豊岡は国内有数の国産鞄の産地です。豊岡鞄の歴史は、1200年前の柳行李から始まったとされており、柳行李の原料である杞柳(きりゅう/コリヤナギ)が市内を流れる円山川付近で採取できたというのが、発展した理由のようです。
時代を経て素材は変わり、西欧のバッグの影響を受けながらそのかたちも多岐にわたっていきました。ベルリンオリンピックの選手団の鞄として、豊岡のファイバー鞄が採用されるなどこの頃には「ファイバー鞄」が豊岡かばんの主流を占めるようになります。ここでいうファイバーとはいわゆる厚紙で、それを幾層にも重ねた「ヴァルカナイズド・ファイバー」は、高純度のパルプ繊維原紙を幾重にも積層・一体処理した硬質繊維ボードで、過去には軍需で活用されるなど高い耐久性を誇る素材です。ヴァルカナイズド・ファイバー製のスーツケースでは英国の「グローブトロッター」が有名ですが、日本にもそれに負けないクオリティを誇る「ファイバー鞄」があるのです。実は私は縁あって豊岡のヴァルカナイズド・ファイバー製のスーツケースを某テレビ局の通販番組で販売したことがあります。気合が入り過ぎて胡散臭くなってしまったことは反省していますが、それでも1個10万円するスーツケースが1日で10個ほど売れたそうです。
豊岡にも数回訪れたことがあります。最初に訪れた時はお世辞にも「活気ある街」とは言い難く、いくつもある鞄工場も古びられていて寂しい気持ちになったものです。しかし何回か行くたびに洗練された店が増え、後継者育成のための学校も設立されていたりしました。canosaが好きな地場産業発展のために、鯖江や井原など他地域の地場産業とコラボした製品を開発したりして、今の時代にあった製品を伝統的な技術で生み出そうといい変化をしています。
鞄の産地として豊岡がここ数十年の間に有名になってきたのは、大手メーカーのOEMから豊岡自らのブランド力が強化されていることに他なりません。最近では「豊岡鞄KITTE丸の内店」や「豊岡鞄伊丹空港ゲート店」などで、目を引く鞄や小物を見たことがあるのではないでしょうか。その理由に豊岡の鞄組合員16社の出資により、豊岡K-Site合同会社を設立して共同で店舗を運営したり、「豊岡財布」や「豊岡小物」を商標登録したりして、地域でブランドを高めた結果だと思います。
canosaでも豊岡鞄のお取り扱いをしています。キャンバス生地を確かな縫製と現在にマッチした色やデザインでとても人気があります。美しい円山川が流れる豊岡。兵庫県ですが冬は中々の豪雪地帯です。行く機会がない方は、その製品を手に取り歴史と変化を感じられてはいかがでしょうか。