canosa story Vol. 40 沖縄の石に、うむいを刻む。 ― スタジオde-jinの石獅子と石敢當

ウォーキングしていると、道端の石にふと足を止めてしまいます。

村落の入り口に置かれた石獅子。
道の突き当たりに刻まれた「石敢當」。

どちらも、沖縄では昔も今も身近にあるものです。

屋根の上にいるシーサーほど目立つ存在ではないかもしれません。
けれど、そこに置かれた理由を知ると、尊いものと思わずにはいられません。

沖縄の人々は昔から、石に願いや思いを託してきました。
「スタジオde-jin」は、そんな沖縄の石文化に向き合い、琉球石灰岩を素材に石獅子や石敢當を制作している那覇市の工房です。


~道の突き当たりにある「石敢當」~

沖縄では、T字路や三叉路の突き当たりなどで、「石敢當」と刻まれた石を見かけることがあります。

沖縄で「マジムン」と呼ばれる魔物は、道をまっすぐ進む性質を持つと考えられてきました。
そこで、道の突き当たりに石敢當を置き、災いを跳ね返す。
いわば、道から入り込んでくるものに対する「守り」です。

沖縄を車で走っていると、住宅街の一角や古い集落の道端で、今でも石敢當を目にすることがあります。

観光用の展示物ではありません。
誰かに見せるためでもなく、そこに暮らす人々の生活の中に、当たり前のように置かれている。

そのことが、石敢當というものの面白さなのだと思います。



~村を守る石獅子~

一方、沖縄各地には、村落の入り口や集落の境界などに置かれてきた石獅子があります。
災いを防ぎ、村や人々を守るものとしてつくられた石獅子です。

現在、私たちがよく目にするシーサーは、屋根や門柱に対で置かれる姿が一般的ですが、古くから伝わる石獅子は、必ずしもそうした形ばかりではありません。

地域によって姿も大きさも違う。
一体で置かれるものもあれば、土地によってそれぞれ異なる役割を持つものもあります。

その土地で暮らす人々の願いや、そこに伝わる信仰が、それぞれの石獅子の姿になっています。

石敢當が道の先に向けた「守り」なら、石獅子は村や集落を見守る「守り」。
形は違っても、その根にあるものには、どこか共通するものがあります。

大切なものを、災いから守りたい。
そんな、昔から変わらない人の思いです。


~沖縄の大地から生まれた石~

スタジオde-jinが素材にしているのは、沖縄で古くから建築や石垣などに使われてきた琉球石灰岩。
珊瑚や貝殻、有孔虫などが堆積してできた石です。
石肌をよく見ると、小さな化石や粒、気泡、独特の模様が現れます。
白くきめ細かなところもあれば、ざらりとしたところもある。
同じ琉球石灰岩でも、採れる場所や石の状態によって、その表情は大きく違います。

例えば、沖縄県中部の勝連半島周辺で採れる「勝連トラバーチン」。
白い石として知られていますが、その肌は一様ではなく、きめの細かなものから粗いものまで、それぞれに個性があります。

一方、沖縄南部などで採れる「粟石」には、星砂や有孔虫などが含まれ、気泡を多く含んだ独特の表情があります。

石を眺めていると、ただ「石」と呼んでしまうのが少しもったいなくなる。
そこには、長い時間をかけてつくられた沖縄の海や大地の痕跡が残っています。
石そのものが、沖縄の風土の一部なのです。


~石に合わせて、つくる~

スタジオde-jinの石獅子や石敢當は、そんな石の表情を生かしながら、一つひとつつくられています。
石を削り、形を整える。

けれど、石がもともと持っている模様や凹凸まで消してしまうわけではありません。
むしろ、そこにあるものを見ながら形にしていく。
だから、同じものはありません。
石獅子なら、一体ごとに表情が違う。
どこか愛嬌のある顔もあれば、凛とした顔もある。

石敢當も、手彫りされた文字と石肌が重なり、一つひとつに違った趣があります。
人が石を形にしているようでいて、最後には、石がもともと持っていた表情が作品を決めている。
そんな印象があります。


~昔からある「守り」を、いまの暮らしへ~

石敢當は、もともと道の突き当たりに置かれるもの。
石獅子も、村や集落を守る場所に置かれてきたものです。

けれど、現代の暮らしの中では、その役割や置かれる場所も少しずつ変わっていきます。

玄関先に置く。
庭の一角に置く。
室内に置いて、毎日眺める。

昔の人々とまったく同じように、ということではありません。
ただ、沖縄の土地に昔からあった「守り」という文化を、今の暮らしの中に取り入れてみる。
そこに、現代の工芸としての面白さがあります。

そして石は、置いたその日で終わりません。
陽に当たり、風にさらされ、手で触れられ、時間を重ねる。
少しずつ風合いが変わり、その場所に馴染んでいきます。

新品のときが完成なのではなく、暮らしの中で時間を重ねていく。
それもまた、石という素材の魅力なのだと思います。

沖縄の海で生まれたものが、長い時間をかけて石になる。
その石を、人が削る。
そして、そこに形や文字を刻む。

石獅子も、石敢當も、もともとは沖縄の人々が暮らしの中で大切にしてきたものです。
だからこそ、そこには単なる造形物とは違う、土地とのつながりがあります。

自然がつくった石に、人の手が加わり、そこに人の思いが重なる。
長い時間を経てきた石が、今度は私たちの暮らしの中で時間を重ねていく。


~沖縄の石に、思いを刻む~

スタジオde-jinがつくる石獅子と石敢當には、沖縄の風土と、そこに暮らしてきた人々の思い、そして石と向き合うつくり手の仕事が重なっています。

沖縄の石を、暮らしの中に。
一つひとつ異なる石の表情と、手の仕事の跡。
時間とともに変わっていくその姿も含めて、canosaから大切にお届けします。