canosa story Vol. 8 伊江島に残るまぼろしの帽子
canosa story 第八回目
こんにちは、canosa 高橋です。
今回は沖縄県・伊江島で作られているアダン葉帽子についてのお話です。
canosaには沖縄県内・県外問わず、日本各地の商品を扱っていますが、その中でも最も思い入れの強いアイテムのひとつがアダン葉帽子です。
初めてアダン葉帽子に出会ったのは、canosaがオープンする一年ほど前。あるイベントで出店者の一人がたまたま私物として持っているのを見かけたのがきっかけでした。素朴で温かみを感じるけどスタイリッシュで、なにか魅かれるところがあり、その方にどこで購入したのか尋ねたのが最初の出会いでした。その帽子は沖縄本島北部からフェリーで約30分ほどの伊江島という島で、その地域に伝わる琉球式の編みの技法を残そうと活動している"帽子クマー"と呼ばれる帽子の編み手さんたちによって作られたものでした。
それからアダン葉帽子について調べていくうちに、戦前は県内各地で盛んに作られ、輸出されるほどの産業だったこと、戦後は沖縄での激しい地上戦によりアダンが焼失したり、作り手がいなくなったりして衰退の一途をたどっていったこと、そして産業としては廃れていたが、伊江島にまだ編み手さんが残っていたことで今も琉球式の編み技法でアダン葉帽子作りが守られていることを知りました。
激戦地だった沖縄で、その編みの技術がかろうじて残り、沖縄県内において様々な形で色々な人を介して受け継がれ、今日まで伊江島で琉球式のアダン葉帽子作りが行われているという奇跡的なストーリーを、伊江島出身の帽子クマーであり、その技法を残そうと活動されている女性から伺いました。そんなまぼろしのアダン葉帽子をcanosaでも扱いたい、そしてとにかく自分自身が欲しい、という気持ちがあふれたのを覚えています。その伊江島の帽子クマーの女性との出会いもcanosaを始動する上で大きなポイントとなり、アダン葉帽子はcanosaが存在するための軸となるような大切な商品となりました。
アダンの葉が帽子になるまでは、編む前の材料の下処理に時間を要します。どの草あみ細工にも共通していると思いますが、材料の準備がとにかく大変なんです。アダンの葉を収穫し、葉のトゲを取り除き、湯がいてからシークヮーサーにつけて漂白し、天日干しで乾燥させます。その後、葉を縦に裁断して糸状にしていきます。材料を編める状態にするまでに1か月はかかるそうで、これが「編むのはご褒美」と言われる所以です。
琉球式のアダン葉帽子はタコの頭のような"タコのちぶる"というのを編み始めに作るのが特徴。そこに葉を追加しながら編み広げていきます。固いアダンの葉は乾燥したままだと編みにくいので、霧吹きなどで湿らせながらの作業です。糊や糸などを一切使わず、人の手とアダンの葉だけで帽子へと形作られていきます。ひとつひとつ編まれたアダン葉帽子には、大量生産された商品とは全く異なり、手しごとの魅力、人の想い、愛情がたっぷり詰まっています。アダン葉帽子を一人でも多くの人に伝えていく使命を、伊江島の帽子クマーの方々と共にcanosaは担っていきたいと思います。
この幻のアダン葉帽子は、ひとつひとつ手づくりのため、実際にお客さまにご試着いただき、フィット感などをお確かめの上でお買い求めいただきたいので、canosaでは、実店舗のみで販売いたしております。オンラインではお売りできない点をどうぞご理解ください。