② 現地の味シリーズ <富良野メロン編>
全国の「てしごと」を集める仕事をしていると、今まで知らなかった「現地の味」に出会うことがあります。それはグルメサイトなどに載るような有名店の味ではなく、むしろこれまで知ることのなかった素朴で隠れた地元の名産品であることが多いのです。そんな忘れられない味を、シリーズとして皆様にご紹介していきます。
その日は旭川や東川の木工芸を一通り見て回り、帯広方面へ向かうため富良野を走っていました。道路沿いには「メロン」の幟を掲げた店が次々と現れます。例によって朝食を抜いていた私は、急に空腹を覚え、そのうち客のいない一軒にレンタカーを止めました。
ショーケースを覗くと、8分の1にカットされた白っぽいメロンと黄色いメロンが並んでいました。早速ひとつ注文し、スプーンを入れます。
(うっ)……言葉を失いました。
うまい。甘い。みずみずしい。味が濃い。
メロンなど年に一度食べるかどうかという程度なので、食べ慣れていないこともあったのでしょう。それでも、これまで食べたことのない美味しさであることは、舌が、喉が、ダイレクトに感じ取っていました。ようやく発した言葉は、「なんじゃこりゃッ!」でした。
よくグルメ番組で、タレントが「あっまーい♡」とのたまうお約束のセリフを聞くたびに、テレビに向かって「角砂糖でも舐めてろ!」と毒づいていた私ですが、こればかりは本当に「あっまーい♡」と認めざるを得ません。いや、ただ甘いだけではないのです。鼻へ抜ける芳醇な香りが素晴らしく、気品のある余韻がいつまでも残ります。一口、また一口とスプーンを口へ運ぶたび、思わず目を閉じてしまいました。ハードな買い付け出張の、束の間の幸せ♡でした。
一息ついて倉庫のような店内を見渡すと、無数の発送用段ボールにメロンが次々と詰められていました。ちょうど最盛期なのでしょう。これから日本全国へ送り出されていくようです。
夏の日中は30度を超え、夜は一気に冷え込むという富良野。この激しい寒暖差がもたらす大自然の恵みと、生産者の方々の努力の結晶が、この一玉に凝縮されているのだと深く得心しました。
気が付けば、もう一度カットメロンを注文し、さらに富良野メロン100%のジュースで喉を潤していました。贅沢極まりない、束の間のメロンパーティーです。
その後、旅は帯広から二風谷のアイヌ文化へと続き、さらに洞爺湖や伊達市の作家さんのもとを訪ねました。その道中、「道の駅だて」に立ち寄った際にもメロンが売られており、富良野でのあの衝撃が忘れられなかった私は、吸い寄せられるようにまた買い求め、ホテルの部屋で貪るように食べました。
北海道は魚介はもちろん、野菜やフルーツの宝庫です。けれど、一番の贅沢は、やはり「旬」をその土地でいただくことに勝るものはありません。
旬のものは美味しく、体にもいい。出会ったら、その場で食べる。これ以上の味はないと思います。同じものを買って帰り、自宅で食べても、不思議とあの時の感激には及ばないのです。
あの富良野の透明な空気、買い付けの心地よい疲労、そして遠くに広がる山並み。それらすべてが、あのメロンを究極の味に仕立てる最高の調味料だったのかもしれません。
結局は味だけではない、あの瞬間を切り取った五感に訴えるすべての偶然。それこそが、ずっと記憶に残るものなのだと思います。