ふっくらと愛らしい、文字通り地球儀のような球体を抱くフォルム。そこには、熱いガラスが冷え固まる瞬間の、生き物のような揺らぎがわずかに纏わされ、まるで呼吸をするように優しく佇んでいます。
完璧な球体でありながら有機的な造形を生み出すのは、作家の背景にある確かな技術です。 沖縄と並ぶガラス工芸の聖地である能登島や富山で研鑽を積み、伝統的な琉球ガラス工房の分業制のなかで、日々夥しい数の硝子と対峙してきたichico氏。溶解炉の熱量、吹きガラスの技術、素材の特性を徹底的に身体に叩き込んできました。そうして培ったタフな職人としての骨格を持ちながらも、既存の商業的な枠組みにとどまらず、工芸を現代アートへと昇華させた独自の表現を追求しています。
お会いするとほんわかとした優しい印象の彼女ですが、実は「プロボクサー」であったという、驚くべき過去を持っています。「ボクササイズじゃなくて?」と思わず聞き返してしまいました。文字通りリングに上がっていたというストイックな一面、そして単身ドイツに渡り、現地のガラス工芸を学ぶために飛び込んでいった圧倒的な行動力。
そんな強靭な芯の強さを持っているからこそ、彼女の手から生まれる作品はどこまでも繊細で、緻密で、そして詩的な情緒に満ちています。作品に付けられた名前のセンスにも、その豊かな感性が光ります。
彼女のレーベル「glass apartment 21g」の「21g」とは、一説に「人間の魂の重さ」とも言われる、目には見えないけれど確かに存在する質量のこと。
過度な装飾を排した引き算の美学の中に、計算と偶然が織りなす繊細な「生きた気泡」や、表面に微かに施されたモール(縦の凹凸)を内包する作風は、まるで光の彫刻のようです。この一輪挿しも、ステム(脚)の付け根にあしらわれたコロンと丸い無垢なガラスの塊が、差し込む光を吸い込んで、テーブルや窓辺に水面や結晶のような瑞々しい影を落とします。
「地球儀いちりん」の名が示す通り、卓上にぽつんと現れた小さな天体のように、日々の暮らしへそっと寄り添い、空間を和ませてくれる佇まい。お庭の草花や季節の一輪を挿すだけで、瑞々しい硝子の透明感と植物の生命力が美しく引き立て合います。
一輪挿しとしての実用性を備えながらも、お花を生けていない時間すら、ただそこにあるだけで空間が成立するオブジェのような美しさ。窓辺や棚に置いておくだけで、空間の空気を心地よく変容させてくれるアートピースです。
工芸と現代アートの境界を軽やかに行き来する、glass apartment 21gならではの現代の機能美を、ぜひお手元でお愉しみください。
サイズ
口径:約1.5cm
高さ:約14cm
重さ:約200g
※本作品は一つ一つが作家による手づくりのため、サイズや重さ、形状、気泡の入り方、質感などには個体差があります。均一な工業製品にはない、手仕事ならではの一期一会の豊かな表情(用の中にある揺らぎ)としてお愉しみいただければ幸いです。
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